世界経済フォーラムが発行する「グローバルリスクレポート」内において、気候変動はトップリスクの1つとして明示されています。2015年にCOP21で採択されたパリ協定に基づき、気候変動を抑制すべく歩み始め、現在では140か国を超える国・地域が、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しており、日本もその1つです。
CCBJHグループ(以下、当社)は、気候変動を重要課題の1つと捉え、2021年に温室効果ガス(GHG)削減目標を公表し、2030年までにScope1,2で50%、Scope3で30%の削減を目指しています(2015年比)。また、2050年までにはカーボンニュートラルの達成を目指します。
2022年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同。続けて、TCFDコンソーシアム、気候変動イニシアティブにも参加し、温室効果ガス削減に向けたアクションを進めてまいります。
この度、2021年10月に公開されたTCFDの更新版ガイダンスを参考に、TCFD提言に基づき情報開示を実施します。
当社は、日本のコカ・コーラシステム共通のサスティナビリティーフレームワークをベースに非財務目標としてGHG排出削減を含む「CSV Goals」を定めており、その達成に向けた活動を推進しています。
気候変動に関しては、2021年よりTCFDワーキンググループによる検討が開始され、2023年1月より、サスティナビリティー委員会を新設し、気候変動を含むサスティナビリティーのさまざまな課題に関する方針・戦略等について議論・策定します。
委員会は主にExecutive
Leadership Team
(ELT)*メンバーで構成され、議題に応じて部長等の役職者、担当者も参画します。オーナーは最高経営責任者であり取締役会議長でもあるカリン・ドラガンが務めます。
事務局はサスティナビリティ戦略統括部が務め、年4回開催し、取締役会に報告します。そこで議論されたことは各部門へフィードバックされます。
取締役会は気候変動領域を含むリスク対策を重要と考えており、経営方針を策定するにあたりリスク選定および成長性において考慮します。2021年以降は気候変動への対策を積極的に評価しており、経営陣による定期的な討議に加えて年次計画および中期計画へも対策を盛り込んでおります。また、決算説明会において、ステークホルダーのみなさまに当社のESGに係る取り組みの実績を説明しています。
* ELTはCEOと各本部長を含めたCCBJHグループ全体のマネジメント組織
当社のリスク分析において、気候変動は最も重要な課題の1つとして特定されました。抽出されたリスク・機会に対して対応策を検討しました。中でも、気候変動に対してはより詳細な分析が必要と判断し、2021年よりシナリオ分析を実施(対象年次2030年、地域:グローバル)。明確化されたリスク・機会に対し、対応策を検討しました。シナリオ分析はTCFDワーキンググループを中心に、取締役会や各事業部門と連携して実施しました。
分析は当社の主事業である飲料事業を対象に、1.5/2℃シナリオ、4℃シナリオの2つのシナリオごとに検討しました。
検討に際して前提としたそれぞれの温度帯の世界観、および参照シナリオは下表のとおりです。
1.5/2℃ | 4℃ | |
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世界観 | 気候変動対応が進み、規制等の移行リスクが強まる 脱炭素社会への移行に伴う社会変化が、事業に影響を及ぼす可能性が高い社会 |
気候変動対応が停滞し、自然災害など物理リスクが強まる 温度上昇等の気候変動が、事業に影響を及ぼす可能性が高い社会 |
参照シナリオ | IEA: NZE, SDS IPCC: RCP1.9, 2.6, 4.5 |
IEA: STEPS IPCC: RCP8.5 |
重要度が高いリスク | 詳細 | 主な対応策 |
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カーボンプライシング導入によるコスト増 | ■炭素税導入およびCO2排出量取引制度の強化などによるコスト増加 ■サプライヤーにおける炭素税の価格転嫁によるコスト増加 |
■リサイクル材の積極採用、軽量化の推進 ■容器/パッケージ軽量化などによる原材料使用量の削減 |
省エネ・GHG排出などの規制強化によるコスト増 | ■省エネ・再エネに向けた設備投資などによるコスト増加 ■サプライヤーの生産コスト増加にともなう調達コストの増加 |
■再エネ導入による外部供給電力への依存減 ■代替原材料活用への転換(日本コカ・コーラと連携) |
プラスチック関連の規制強化によるコスト増 | ■リサイクルPET樹脂などの調達コストの増加 | ■代替材料活用への転換、リサイクル材の積極活用 ■容器軽量化の促進 |
水使用規制強化によるコスト増 | ■地下水税導入による調達コストの増加 | ■水使用量の削減 ■自治体との連携強化 |
おお客さまの行動変化への対応が不十分な場合の売上低下 | ■小売店などでの当社製品の取り扱い停止や顧客離反による売上減少 | ■持続可能な調達に則った製品の拡充 ■環境に配慮した製品の展開(例:100%リサイクルPET/ラベルレス) |
対応が不十分なことによる投資家・金融機関からの評判低下 | ■対応が不十分な場合の株価の低下・資金調達コストの増加 | ■SBTi認定取得やRE100への参画(※検討中) ■TCFD関連などをふまえた積極的かつ継続的な情報開示・対外発信 |
1本あたりCO2約60%削減へ※1
「コカ・コーラ」をはじめとする旗艦製品 に100%リサイクルPETボトルを導入しています。2022年の実績は、サスティナブル素材使用率50%※2を達成しました。
※1 一般的なPETボトルから100%リサイクルPETボトルに切り替えた場合
※2
サスティナブル素材:「ボトルtoボトル」によるリサイクルPET素材と、植物由来PET素材の合計
※一般的なペットボトルから100%リサイクルペット素材に切り替えた場合。
プラスチック使用量の削減
コカ・コーラシステムでは、1970年代より有限資源の有効利用とプラスチック使用量削減のため、製品の容器包装軽量化に取り組んでいます。2021年春より「コカ・コーラ」700ml PETボトルを従来の42gから27gに軽量化しました。
重要度が高いリスク | 詳細 | 主な対応策 |
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異常気象による製造効率・製造数量減少 | ■原材料の調達コストの増加 ■感染症リスク上昇による対応コストの増加 |
■調達先の分散化 ■BCP対応の強化 |
異常気象による事業停止 | ■工場など自社拠点の風水害に起因する操業停止による復旧コスト発生や販売機会逸失の影響 | ■製造拠点、営業/物流拠点、およびサプライチェーンにおける風水害リスクの特定、および優先順位付け、対応策の強化 |
降水・気象パターン変化などによる供給リスク | ■原材料の調達コストの増加 | ■調達先の分散化 ■サプライヤーとの協業(農法の開発など※検討中) |
降水・気象パターン変化などによる資産劣化・エネルギーコスト増 | ■気温上昇にともなう光熱費などの増加 | ■再エネ導入による外部供給電力への依存減 |
再生エネルギー導入
2019年より、山梨県と東京電力エナジーパートナーが共同運営する電力供給ブランド、やまなしパワーPlus「ふるさと水力プラン」を採用することにより、白州工場では電気使用に伴うCO2排出量ゼロにしています。
省エネルギーへの取り組み
各工場では、機械効率の改善、生産性改善および歩留まり改善を軸としたエネルギー効率アップにつながる種々のプロジェクトを全工場横断で展開、コージェネレーションシステムの導入などを進めています。
複数シナリオ下における、リスクを最小化し、機会を最大化していくためにも、今回検討した対応策は、経営戦略、中期計画に反映するとともに、年次計画に落とし込むことで気候変動のリスクの低減・機会の最大化を図ります。
今後は、定量を含む分析結果の開示範囲の拡大・精緻化を推進していくとともに、社会の動向に応じ、シナリオ分析の定期的な見直しを行っていきます。
重要度の高い機会 | 詳細 | 主な対応策 |
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省エネ・GHG削減に寄与する製品へのお客さまの需要増加 | ■環境に配慮した原材料やパッケージによる売上の増加 | ■環境に配慮した製品(例:100%リサイクルPETボトル/ラベルレス/リユース/パッケージレス)の開発・展開 |
温暖化にともなうお客さまの嗜好変化 | ■熱中症対策や健康飲料の売上増加 | ■熱中症対策や健康飲料製品の開発・展開 |
効率的なサプライチェーンによるコストおよび GHG 排出量の低減 | ■再エネ・省エネ設備(施設、ロジスティクスなど)導入による電力コストやGHG排出量の削減 ■水使用量の削減によるコスト低減 |
■最新技術を搭載した製造機器の導入、モニタリングによる製造プロセスや工場設備の継続的な改善 ■水源涵養力向上のさらなる促進 |
100%リサイクルPETボトルの導入
「コカ・コーラ」をはじめとする旗艦製品 (4ブランド44製品2)に100%リサイクルPETボトルを導入しています。
ラベルレス商品の導入
容器からラベルをなくすことにより、ラベルをはがす手間をなくし、リサイクルのための分別が楽になる製品です。2020年4月に発売した「い・ろ・は・す 天然水」を皮切りに、「綾鷹」「爽健美茶」「カナダドライ ザ・タンサン・ストロング」「アクエリアス」「コカ・コーラ」「ジョージア」を含む10ブランド21製品に拡大しています。
リスクマネジメント体制(2022年1月以降)
当社は、リスクと機会の管理を可能にするエンタープライズリスクマネジメント(ERM)を含む、有害事象への対応と回復を行うと同時に事業の成長をサポートする予防的および対応的活動を含むビジネスレジリエンスプログラムを導入しています。当社のERMプログラムでは、気候変動やサスティナビリティーの分野を含むあらゆるリスクを検討しています。
当社は、COSOフレームワークと連動したERMプログラムを構築しており、リスクおよびビジネスチャンスの特定、リスクへの対応策の構築、迅速かつ適切な意思決定、といった事業の持続的な成長を支える包括的な枠組みを提供しています。ERM推進部は、あらゆる観点から経営陣のERMへの関与度向上のためのプロセスを実施しています。また、定期的に部門別リスクレビューセッションを実施しており、各部門のリスクオーナーと緊密に連携し、ビジネスリスクの評価と管理に取り組んでいます。
また、2022年にはリスクマネジメントフォーラムを設立し、リスクマネジメントプロセスの継続強化に取り組んでいます。当フォーラムはすべての部門を代表するシニアマネジメント層で構成され、四半期ごとに開催しています。ELTがリスクについて週次で議論を行うなか、ERMは当フォーラムでの議論の内容をELTへ報告し、ELTは四半期ごとにリスクと機会を詳細に分析しています。
本リスクマネジメント体制では、当社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに重大な影響を及ぼす可能性のあるリスクを将来の発生可能性と影響度の観点から抽出し、気候変動を主要なリスクの一つとして捉えています。 気候変動に関しては、より詳細な分析が必要と考え、2021年に特に重要度の高い気候変動リスク・機会に関してシナリオ分析を行い、その影響度を評価しています。 移行リスク(政策、評判、技術、市場)、物理リスク(急性、慢性)、機会(製品およびサービス、市場、エネルギー源、資源効率、レジリエンス)に識別し、発生の可能性、発生時のインパクトを元に優先順位付けを行っています。
当社は、2050年カーボンニュートラルを目標に掲げ、中期目標としては日本国内のバリューチェーン全体におけるGHGを2015年比で2030年までにスコープ1,2において50%、スコープ3において30%削減することを目指す目標を策定しています*。具体的には、再生エネルギーの推進を進めるほか、容器包装・水などの資源に関する目標を以下のように定め、取り組んでおります。
シナリオ分析で導出したリスクの一部に対しては、既に指標と目標を設定しており、順調な進捗となっています。今後、シナリオ分析の定期的な見直しを通し、その機会やリスク対応となる指標と目標を検討していきます。また、目標達成のために、効率的なサプライチェーンによるコスト低減などを機会と捉えており、再生可能エネルギーの導入を促進するなど積極的に取り組んでいきたいと考えています。
* GHGプロトコルに基づき算出。また削減目標は絶対量に基づく。