リスクマネジメント

大きなステージで共創価値(CSV)を実現

持続可能な開発目標(SDGs)との関わり

リスクマネジメント

レジリエントなビジネスの創造

 CCBJHグループでは、利益をともなう成長を可能にするためのリスクと機会の管理、人と資産の保護および危機発生時の対応能力の向上、さらに、財務面での防衛策としての保険活用などの方法を統合したビジネスレジリエンスプログラムを実施しています。私たちのプログラムの中核は、リスクと機会を理解し、機敏に対応する権限を与えられたチーム、危機に柔軟に対応できるリーダーシップ、短期的な対応と長期的なレジリエンス戦略の両方に対応できる人材とプロセスの能力を向上を図ることです。そのプロセスにおいて、絶えず変化する事業環境のレビューと、現状および将来起こり得るリスクと機会の評価も行います。当社では、主要なリスクの対応策を策定・実行しており、混乱が発生した場合でも業務を継続し、お客さまにサービスを提供できることに注力しています。そのため、危機管理および事業継続計画を確立し、少なくとも年1度、危機管理リーダーを訓練するため、対話型シミュレーションを実施しています。

リスクマネジメント体制

 CCBJHの取締役会は、エンタープライズリスクマネジメント (ERM)を柱とするビジネスレジリエンス戦略に対する全体的な責任を負い、現状および未知のリスクとそれらに対する戦略的対応、中期経営計画「Vision 2028」の目標に沿ったレジリエンス強化のための経営活動の監視に密に関与しています。当社のビジネスレジリエンスプログラムはリスクマネジメント責任者(HRM: Head of Risk Management)が主導しており、ELTメンバーとして、当社の各事業部門の責任者およびリスクオーナーと緊密に連携し、特定のビジネスリスクに対応しています。リスクマネジメント責任者には、喫緊のリスクおよび機会がないか、当社の事業の動向を広く見渡すことが求められ、定期的な報告を通じ、ELT、監査等委員会、取締役会全員に対してリスクを可視化しています。

ERMフレームワーク

 当社のERMフレームワークはCOSOフレームワーク※とISO31000の重点項目を取り入れており、機会の活用および、リスクに基づく適切な意思決定と予見可能なリスクの特定および能力を向上させることで、収益をともなう成長を促すPDCAベースのリスク体制を提供します。ERMプログラムには、当社の事業戦略、目標、原則との整合性を確保するためのさまざまな要素が組み込まれており、当社の戦略的方向性、倫理、価値観との一体化を推進しています。また、事業計画サイクルと連動し、当社のリスクプロファイルを更新、あるいは機会を創出しうる要因がないか、社内外の環境を継続的に監視します。さらに、当社が付すべき保険の種類と金額を年に一度評価しています。対象となるリスクの発生可能性と重大性に対し、可能な補償範囲および費用を対照させることで、当社の保険によるリスク移転のアプローチも変化します。
 当社が保有するリスクとその緩和策、対応策についても、常時評価を行っています。監査等委員会に対しては四半期ごと、取締役会には年2回、プログラム全体の状況が報告されます。本プログラムの内容は、グローバルのベストプラクティスに照らし、内部監査チームと外部監査人が定期的に監査しています。
 2023年は、研修や意識啓発コースを実施するなど、ERMとスマートリスクプログラムを企業文化およびビジネスDNAに組み込む取り組みを引き続き強化しました。また、定期的なELTとの対話や、四半期ごとのシニアマネージャーが参加する部門別リスク・機会の特定およびレビュー会議を通じ、継続的なリスクと機会の可視化に努めました。

※ トレッドウェイ委員会支援組織委員会(COSO)が発行している世界基準の内部統制のフレームワーク

エンタープライズリスクマネジメント(ERM)プログラムのプロセス

重要リスク

 当社は総合的なビジネスレジリエンスプログラムにより、事業環境の不確実性に注意を払い、新たなリスクと収益性の高い成長機会を積極的に特定しています。主要なリスクを定期的に見直し、発生の可能性、潜在的な影響、発生速度を評価し、またそれらを管理するための戦略を設定しています。当社の主要なリスク表には、将来的に当社に影響を及ぼす可能性のあるすべてのリスクが含まれているわけではなく、まだ知られていないリスクや、現在重要性が低いと評価されているリスクでも、将来的に当社の事業や財務業績に影響を及ぼす可能性があります。
 気候変動は、長期的には事業にとって重要なリスクであると捉えていますが、一方で入念に戦略や設備投資を計画し、積極的な備えをすることで、当社事業に活用できる大きな機会にもなります。気候変動リスクは、すべてのレベルにおけるリスクマネジメントに組み込まれ、リスクマネジメントフォーラムおよびサステナビリティー委員会が優先的に取り組むべき課題としており、TCFDおよびTNFDとの整合性を推進しています。2024年には、報告すべきリスクに大きな変化はないものの、表に示すとおりリスクの優先順位を変更しました。


リスクカテゴリ 説明と潜在的な影響 主な緩和策
サイバーセキュリティとシステム 業務停止、システム障害やサイバーインシデントによる情報漏洩の発生
  • 消費者や顧客からの信頼失墜
  • 財務状況の悪化
  • システム障害による損傷を軽減するための対策
  • サイバー攻撃の予防的な脅威の特定とシミュレーションテストによるシステムセキュリティの向上と強化
  • 情報およびデータプライバシーの管理に関する法令の遵守
  • 社員トレーニングプログラムによる情報セキュリティに関わる社内規程の確立
人材(確保と維持) 業績不振、人口の高齢化、競争の激しい雇用環境により、十分な人材の確保、維持および育成、ならびに労働組合との建設的な関係を構築することが困難
  • 事業活動の停滞または停止
  • サプライチェーン業務の停滞または停止
  • 成長計画の未達
  • 戦略的な人材育成計画と給与体系の管理
  • 多様な人材基盤の採用と育成への取り組みの確保
  • 無人オペレーション、オンライン取引、出荷業務のアウトソーシング化
  • 職場環境の改善による社員満足度の向上
  • 経営陣と社員とのコミュニケーション強化
健康と安全 安全システムに関わるコンプライアンス、オーナーシップ、責任感または意識の欠如、メンタルヘルス問題、老朽化した機器の使用などによる深刻な健康または安全上の労働問題の発生
  • 死亡または重傷
  • 評判の低下
  • 起訴および/または罰金
  • ISO45001認証/内部監査戦略の継続
  • メンタルヘルス調査の継続実施
  • さまざまな安全対策の実施
  • 安全意識向上のための教育と研修
  • コカ・コーラシステムのベストプラクティスを活用するためのプログラムの改良
成長戦略 人材能力に起因する、競争優位性の向上と変革を通じた事業成長のための施策(事業統合、合弁事業、資本投資、プロジェクト管理など)の失敗
  • 減損損失による財務状況の悪化
  • 株主からの信頼喪失
  • さまざまな状況に柔軟かつ機動的に対応できる強固な体制の構築
  • 複数のシナリオを考慮した事業統合戦略の策定
  • プロジェクト管理や技術変革の実現に必要なスキルセットを確保する人材開発戦略
  • 取締役会および執行役員による監督
消費者マインドセットの変化 砂糖消費への懸念と健康意識の高まり、または価格設定による消費者の嗜好の変化
  • 消費者基盤の獲得または喪失
  • 消費者からの信頼獲得または喪失
  • 当社グループの事業に不利益を及ぼす課税
  • 製品イノベーションとポートフォリオ拡充に注力
  • 低カロリー・ノンカロリー製品の強化
  • パッケージサイズの多様化
  • 消費者参加型プログラムによる健康的なライフスタイルの推進
営業および競争環境の変化 市場環境の変化への効果的、効率的かつ機敏な対応が困難
  • 消費者基盤の獲得または喪失
  • 消費者からの信頼の獲得または喪失
  • 販売利益の減少
  • 販売可能なポートフォリオの減少
  • 小売業者のニーズを満たす製品を提供するため、製品ポートフォリオを強化し、生産性をさらに加速
  • 業務効率を向上させるために、Right Execution Daily(RED) を強化
  • インターネット通信販売の急増に対応するために、オンラインチャネルを拡大
  • テクノロジーの利点を活用するための人材開発戦略
製造、物流、インフラ 製造・物流業務の問題や天候・消費行動の変化などにより安定供給が阻害
  • 販売量と収益の減少
  • 顧客からの信頼喪失
  • 市場環境の変化に対応する柔軟な供給体制の構築
  • 繁忙期の需要増加に、より容易に対応できるようにするインフラ(製造ライン等)への投資
  • タイムリーな在庫状況の共有ができるシステムに強化
自然災害 地震や洪水などによる社員の死亡・負傷、生産・物流・販売業務のための施設の損傷
  • 事業活動の停滞または停止
  • サプライチェーン業務の停滞または停止
  • 販売機会の減少
  • 復元コストの発生
  • 継続性計画(BCP)と体系的かつ合理的な対応を可能とする危機対応能力の強化
  • 定期的な危機・災害対応訓練とシミュレーションによる対応能力の強化
  • 物流拠点の被災に備えた代替拠点の整備と輸送能力の確保
  • 地震保険の付保
持続可能性 気候変動リスクを含むステークホルダーの持続可能性に対する意識の変化に対応できない、またはステークホルダーや規制当局の要件に沿った持続可能性やESGトピックの報告が不十分
  • ステークホルダーの信頼と評判の低下
  • 気候変動分野における投資家活動の活発化
  • 財務への影響、気候変動に対する顧客の期待に応えられず、競合他社に顧客が流れた場合の売上減
  • サステナビリティ委員会におけるサステナビリティ計画と目標の検討、調整
  • CSV目標を達成し、持続可能な社会の発展に貢献
  • 再生PET樹脂の利用率向上、より軽量なパッケージの開発、使用済みPETボトルのより効果的な回収など、コカ・コーラシステムのイニシアティブの推進
  • ESG、TCFD、TNFDの報告要件に沿った積極的な対応
気候変動 気候変動による水や農産物などの原材料不足
  • 商品入手可能性と製品供給の減少
  • 生産コストの増加
  • 製品ポートフォリオの制限
  • 差別的な課税
  • 持続可能な調達への注力
  • ステークホルダーとの関与
  • 代替サプライヤーの確保と、パフォーマンスデータの活用によるサプライヤーの選定と管理の強化
  • 調達困難な原材料の購入量の調整、必要に応じて他の原材料への切替
品質と食品の安全性 製品関連の品質および食品安全に関する事故
  • 消費者からの信頼喪失
  • 製品回収や不良品の大量処理に伴う収益悪化
  • ペナルティによる販売機会の損失
  • サプライヤーの品質監査と品質認証
  • 製造から販売までの全工程における品質管理の意識
  • 消費者/顧客からのご指摘にタイムリーに対応をするための品質管理・報告態勢の強化
  • 品質/食品安全問題への迅速かつ効率的な対応を可能とする原因特定および対応策策定プログラムの強化
法令へのコンプライアンスと倫理 法令、社内規則、倫理行動規範に対する違反
  • 消費者・顧客からの信頼喪失
  • ブランドと評判の悪化
  • 罰則・罰金
  • 不正による経済的損失
  • 経営陣の強い姿勢、企業のふるまいに関する継続的なコミュニケーション
  • 倫理・コンプライアンス委員会の定期的な開催
  • 業務プロセスや組織構造、ITシステムの再構築による不正機会の低減
フランチャイズ関係 契約/関係の条件および更新、価格の集中、製品プロモーションのサポートに関して、商標所有者としてのザ コカ・コーラ カンパニー(TCCC)および日本コカ・コーラ(CCJC)への依存度が高いこと、または関係の変化
  • 商標権の使用停止、製品開発力およびブランド力の低下による売上の減少
  • 原液価格上昇によるコスト増加
  • 販売サポートが減少した場合の販売促進費用の増加
  • TCCCおよびCCJCとの協力関係の維持・向上
コモディティコストの増加 為替レートの変動、原材料不足、商品価格の変動による調達コストの著しい増加による収益性への影響
  • コストベース増加
  • 製品供給量の低下
  • 製品ポートフォリオの制限
  • デリバティブ取引やヘッジの利用により、為替レートや商品価格の変動による影響を軽減
  • コカ・コーラシステム内での共同調達により低コストで原材料を調達

具体的な気候変動関連リスクとTCFDおよび自然関連リスクとTNFDへのアプローチは、こちらからご覧いただけます。