ウィーンの旧市街を取り巻くこの街ならではの環状道路、“リング”にちなんで命名されたこのアンサンブルは、まさにウィーンの音楽を演奏するために結成された。
2016年8月までウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の名コンサートマスターとして同団を率いたライナー・キュッヒルを中心に、ヴァイオリン2名、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、フルート、ホルン各1名にクラリネット2名の9名編成で、ウィーン・フィルの腕利きの主要メンバーたちである。
ウィーン情緒の香り高いシュトラウス・ファミリーやツィーラー、ランナーたちのワルツ、ポルカの演奏は、ウィーンに寄せる彼らの愛情と誇りを痛感させ、聴く者をこの上ない幸福感で満たしてくれる。
ウィーン楽友協会での年末恒例のコンサート・シリーズでは、1999年以降、ウィーン・リング・アンサンブルの演奏会が毎年ブラームスザールで行われ、地元ウィーン子の絶賛を集めている。2002年夏には、ルツェルン・フェスティバルに招待された。
日本へは1991年に初来日し、引き続き1993年以降毎年のように来日。ウィーンでの「ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサート」に出演後、すぐに日本へ駆けつけてニューイヤー・コンサートを行い、本場の響きと香りをそっくり日本のファンに届けている。
1998年には長野オリンピック文化・芸術祭参加公演に選ばれ、現地で2回の演奏会を行った。
その他、度重なるテレビ放映、CDで、日本でもすっかりおなじみの存在である。2018年は28回目の来日となる。
- ライナー・キュッヒル(ヴァイオリン)
Rainer Küchl, Violin
- ヴァイトホーフェン・アン・デア・イプス生まれ。ウィーン国立音楽大学でフランツ・サモヒル教授に師事。21歳でウィーン・フィルのコンサートマスターに就任し、2016年8月まで45年にわたり同団を率いた。 1982年よりウィーン国立音楽大学教授。 1973年オーストリア文部省よりモーツァルト解釈賞を受賞。ウィーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団(キュッヒル弦楽四重奏団)の活動に対して、1978年「ウィーンの笛時計賞」を受賞。 1985年ザルツブルク州知事より金功労賞を受賞。1988年オーストリア芸術名誉勲章を、1994年にはオーストリア共和国功労勲章大章を、2010年には日本で旭日中綬章を受章。
- ダニエル・フロシャウアー(ヴァイオリン)
Daniel Froschauer, Violin
- ウィーン生まれ。ニューヨークのジュリアード音楽院に留学した後、ウィーン国立音楽大学でアルフレッド・シュタール、アルフレッド・アルテンブルガー両教授に師事。ピンカス・ズーカーマンにも学んでいる。 1990年にミュージカル・アメリカの「ヤング・アーティスト賞」を、また1997年にパリのピエール・ランティエ国際コンクールを受賞。 ソリストとしても活躍し、ザルツブルク・モーツァルテウム管、ケルンWDR響などと共演している。 1998年よりウィーン・フィルとウィーン国立歌劇場管の第一ヴァイオリン奏者を務め、2004年からはセクションのリーダーとなる。ウィーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団(キュッヒル弦楽四重奏団)メンバー。
- ハインリヒ・コル(ヴィオラ)
Heinrich Koll, Viola
- ウィーン生まれ。ウィーン国立音楽大学でエディット・シュタインバウアー教授とフランツ・サモヒル教授にヴァイオリンとヴィオラを師事。 1976年から1979年にわたりウィーン交響楽団のソロ・ヴィオラ奏者、1980年からはウィーン・フィルのソロ・ヴィオラ奏者を務めている。ソリストとして室内楽奏者としてオーストリア内外でコンサートを重ねている。 ウィーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団(キュッヒル弦楽四重奏団)メンバー。オーストリア・ユース・フィルの指導も行っている。
- ロベルト・ナジ(チェロ)
Robert Nagy, Cello
- ハンガリー生まれ。12歳でハンガリーのジュニア・コンクールで優勝し、ブダペストのフランツ・リスト音楽院ではミクローシュ・ペレーニらに師事。クラウディオ・アバドが指揮するグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラでも首席チェリストとして活躍した。ウィーン国立音楽大学ではヴォルフガング・ヘルツァー教授にも師事し、1992年にウィーン国立歌劇場管弦楽団のメンバーとなる。2005年よりウィーン・フィルの首席チェロ奏者。 ソリストとして、またいくつかの室内アンサンブルのメンバーとしても活躍している。レコーディングは、カメラータ・トウキョウ、フンガロトンなどのレーベルで収録している。 ウィーン・ムジークフェライン弦楽四重奏団(キュッヒル弦楽四重奏団)メンバー。2009年よりウィーン国立音楽大学教授。
- ミヒャエル・ブラデラー(コントラバス)
Michael Bladerer, Contrabass
- ヴァイトホーフェン・アン・デア・イプス生まれ。ウィーン国立音楽大学でルートヴィヒ・シュトライヒャー教授に学び、首席で卒業。さらにグラーツでヨハネス・アウアースペルクに、ベルリンでノルベルト・ドゥカにも学んでいる。 リンツ・ブルックナー管、ウィーン響、ベルリン・コーミッシェ・オーパーを経て、1999年よりウィーン国立歌劇場管、2002年よりウィーン・フィルの団員となった。また、ウィーン・ホーフムジークカペレのメンバーとしても活躍。 室内楽にも熱心で、ウィーン八重奏団のメンバーであるほか、ソリストとして20以上の現代曲の初演を行っている。
- カール=ハインツ・シュッツ(フルート)
Karl-Heinz Schütz, Flute
- インスブルック生まれ。オーストリアのフォアアールベルク州立音楽院やフランスのリヨン国立音楽院で学び、オーレル・ニコレにも師事。 1998年のカール・ニールセン国際フルート・コンクール、99年のクラクフ国際フルート・コンクールで優勝。2005年から11年までウィーン交響楽団のソロ・フルート奏者を務め、その後ウィーン国立歌劇場管の首席ソロおよびウィーン・フィルのソロ・フルート奏者となった。スイス・ロマンド管、ハンブルク北ドイツ放送響、バイロイト祝祭管などに客演し、ブーレーズ、マゼール、ルイジ、ウェルザー=メストらの指揮者と共演している。レコーディングも多い。ウィーン国立音楽大学教授。
- ペーター・シュミードル(クラリネット)
Peter Schmidl, Clarinet
- チェコスロヴァキアのオルミュッツに生まれる。父親も祖父もウィーン・フィルの第一クラリネット奏者だった。ウィーン国立音楽大学でルドルフ・イェテル教授に学ぶ。1965年よりウィーン国立歌劇場管弦楽団クラリネット奏者。1968年、ウィーン・フィルのソロ・クラリネット奏者となる。 室内楽活動にも力を入れるほか、ソリストとしても活躍。ウィーン・フィルはもとより、パリ管、シュターツカペレ・ドレスデン、NHK響などと協演。バーンスタインの指揮で様々な録音や撮影も行った。著名な室内アンサンブルのメンバーとしても活動し、クラリネットの室内楽レパートリーのほとんどすべてを録音している。 1967年よりウィーン国立音楽大学教授。
- ヨハン・ヒントラー(クラリネット)
Johann Hindler, Clarinet
- シュタイアマルクのフローンライテンに生まれる。グラーツで音楽の勉強を始め、1975年ウィーン国立音楽大学入学、ペーター・シュミードル教授のクラスに所属。 1989年よりウィーン国立歌劇場管弦楽団とウィーン・フィルのメンバー。 1980年よりシュミードル教授の助手としてウィーン国立音楽大学でクラリネットを指導。国内外で室内楽活動やレコード録音も行っている。
- ヴォルフガング・トムベック(ホルン)
Wolfgang Tomböck, Horn
- ウィーン生まれ。10歳の時にウィーン・フィルの第一ホルン奏者だった父親からホルンを学び始める。1972年よりウィーン国立音楽大学でエリック・ヴェルバ教授に師事。 1978年にウィーン国立歌劇場管弦楽団で演奏活動を始め、その後まずウィーン・フィルの第三ホルン奏者を、そして1980年より第一ホルン奏者を務める。その間べーム、カラヤン、バーンスタインなど多くの著名な指揮者らと共演した。また室内楽奏者やソリストとしても活躍。ウィーン・フィルの数多くのアンサンブルと共演し、ナクソス・レーベルから室内楽・ソロ演奏のCDをリリース。