コーポレートブログ

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 「知る」から「動く+広める」へ ーLGBTQ+当事者とともに活動する仲間「アライ」として、自分たちに何ができるのか

2025年12月15日

10月11日の「カミングアウトデー」に合わせ、当社は10月15日、株式会社ファミリーマートと共同でイベントを開催しました。イベントでは、トランスジェンダーの当事者である藥師実芳さん(認定NPO法人ReBit代表理事)が、自身のライフヒストリーを通じて「アライ」(※)としての関わり方を語りました。

藥師さんの「ありのままで未来を選べる社会を」というメッセージを受け、両社の社員たちは、「アライとして自分に何ができるか」を考え、ステッカーの掲示やSNSでの発信など、今日から実践できるアクションをそれぞれの言葉で宣言。アライとしての第一歩を共有する時間となりました。

(※)「同盟」や「味方」などを意味する英語「ally」が語源で、自分自身が性的マイノリティであるかどうかによらず、差別や偏見をなくす社会の実現を目指し行動する人のこと

毎晩「こんな生き方は嫌だ」と泣いていた10代

イベントでは藥師さんが登壇し、自身のライフヒストリーを参加者へ共有しました。

「生まれたときは法律上女性として割り当てられて、男性として認識しているので、17歳から男性として生きている、トランスジェンダー男性です」と自己紹介しました。

3歳から9歳までアメリカ・ニュージャージー州で育ち、「7歳のときに初めてクラスの女の子を好きになりましたが、そのことを告げても、周囲の誰もおかしいとは言いませんでした」と幼少期を振り返りました。

ところが、小学校4年生で日本に戻ると、藥師さんは前提の違いに戸惑うこととなります。

「学年集会などの場であぐらをかいて座っていたら『女の子なのに』と叱られ、バレンタインの時期には好きな女の子の話を友だちに打ち明けられませんでした。『女の子らしくしなさい』と言われるたびに、モヤモヤした気持ちが募っていきました」

小学6年生のときには、テレビドラマでトランスジェンダーの登場人物が描かれているのを見て、「夜中、家族が寝静まってから、1人でパソコンに向かって『トランスジェンダー』について調べていた」といいます。しかし当時はインターネット上に誤情報があふれており、「日本では理解がないから働けない」といったデマ情報に接して戸惑う日々でした。

「それでも女の子らしく見せるために髪を伸ばし、制服のスカートを着用して明るく振る舞っていましたが、夜になるたびに布団の中で泣いていました」

「藥師は藥師だから、それでいい」。アライの言葉に救われた

当時の苦しい胸の内を話す藥師さん。17歳のときに、藥師さんは意を決してクラスの友人にカミングアウトしたといいます。

「髪をばっさり切り、放課後に友だちを呼び出して、自分がトランスジェンダーであることを話しました。大泣きしてしまい、伝えるのに30分かかってしまいましたが、『藥師は藥師だから、それでいいじゃん』と言ってくれたんです」

その友人が藥師さんにとっての初めてのアライでした。「アライの力は本当に大きかった」と振り返ります。

大学時代の就職活動では50社を受け、すべての面接でカミングアウト。「当時は内定をとってから伝えると、内定を断れる事例もあり、言わないこともリスクだったため言わざるをえなかった」と藥師さんは話します。しかし、面接が3分で打ち切られてしまったり、「藥師さんって子どもを産めるんですか?」と聞かれたりするなど、戸惑い傷つくこともたくさんあったといいます。

「その中でも、最終的に入社を決めたウェブ広告代理店の人事部長は『入社前であっても何か心配なことがあったらいつでも言ってください』と私を支えてくれました。ここでもアライの存在を心強く感じました」

藥師さんはその後、「ありのままで未来を選べる社会をつくりたい」という理念のもと、認定NPO法人ReBitを設立。LGBTQ+を含む多様性の包摂をめざし、行政・学校・企業での施策推進や啓発、就労支援や福祉体制の整備に加え、各地LGBTQ団体の経営支援を通じた担い手育成に注力しています。

「日々悩んでいた子ども時代、身近な大人に『あなたのままで大丈夫』と言ってもらいたかったという思いがあります。誰にも言えずに悩んでいる子どもたちは今もたくさんいるはず。私はそうした子どもたちへ、『あなたのままが素敵』という言葉をたくさん伝えていきたいと考えています」

SOGIハラスメントが発生したときに、私たちができること

藥師さんは続いて、「カミングアウトデー」の意義について解説しました。

LGBTQ+の割合は全人口の3〜10%とされており、「左利きが10%と言われているので、それと同じくらい身近な存在」だと藥師さんは説明します。一方、職場では「LGBTQ+当事者の約9割が誰にも打ち明けていない」という調査もあります。

こうした中、近年ではLGBT理解増進法(性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律)の施行によって、行政や企業、学校に「理解促進」「安全な環境づくり」「相談体制の整備」が努力義務として課せられるようになりました。

また、2015年に東京都世田谷区・渋谷区で始まったパートナーシップ制度が全国に広がり、2024年には小学校のすべての保健体育や道徳の教科書でもLGBTQ+が取り上げられています。

藥師さんは「企業の取り組みも加速している」と話します。

「一般社団法人work with Prideが運用する、企業や団体におけるLGBTQ+に関する取り組み評価制度である『PRIDE指標』には、2025年には企業・団体922社が認定を受けています。」

当社とファミリーマート社は、この指標の最上位である『レインボー』を受賞し、日本企業の取り組みをリードしています。※2025年時点

職場において、アライにはどのような役割が求められるのでしょうか。藥師さんは、「SOGIハラスメント」(性的指向や性自認に関連して発生する差別的言動・行動や嫌がらせなど)が生じている際にそれを見聞きしている周囲にいる人ができることとして、以下の4つを紹介しました。

①ストッパー(制止する人)……ハラスメントの現場で「やめましょう」と止めに入る

②レポーター(通報・通告する人)……「現場でこんなことがあった」と専門部署に伝える

③スイッチャー(話題転換をする人)……話題を変えてその場のハラスメントを止める

④シェルター(避難先になる人)……ハラスメントに同調せず、後で当事者をフォローする

こうした役割を示した上で、「100点満点のアライはいません。毎日学び続けることが大切です」と藥師さんは強調しました。

この瞬間からどんな行動を起こせるのか、それぞれの思いを共有

イベントの後半では、当社とファミリーマートの各担当者も登壇。ともに以前からサステナビリティや多様性の分野で連携しており、「PRIDE月間」などでも協働を続けています。2025年6月のPRIDE月間では両社2600名の社員投票からうまれたアライステッカーを作成し、『We are Rainbow』というプロジェクトで商品パッケージにも反映しました。

このステッカーのデザインは、2024年のカミングアウトデーイベントがきっかけとなって生まれたもの。発案者の社員は「最初は『アライになっても何ができるか分からない』という気持ちもありましたが、行動してみることで学ぶ意欲が湧きました」と振り返りました。

その後、参加者たちは「アライ活動はハードルが高くないと伝えたい」「ステッカーをPCやスマホに貼ってアライであることを示したい」「左利きのようにLGBTQ+が“当たり前”である社会を実現したい」といった思いを語り合いました。

中には「ストッパーやスイッチャーとして行動している人の存在を互いに認識し合うことも大事」という意見も。イベント内で学んだ知識をもとに、この瞬間からどんな行動を起こせるのかを共有する貴重な時間となったようです。

参加者のディスカッション、ワークショップを笑顔で見守った藥師さんは「企業で働くみなさんがアライとして発信してくれるのは、当事者にとって本当に心強いこと。多くの人が勇気をもらっているはずです」と締めくくりました。

※記載された情報は、公開日現在のものです。最新の情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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