コーポレートブログ

コーポレートブログ

「トップダウンでは意味がない」当社が取り組む“現場最優先”の製造DXプロジェクト

2023年7月11日

左から、SCM本部 製造統括部 製造企画部 製造DX推進課 吉田武浩、前田勉、課長 熊谷直仁、藤田真吾

現在の当社は、国内にあった12のボトラー社が統合して誕生しました。この統合によって新たに進められているのが製造現場のDXです。「ペーパーレス化」「製造工程の遠隔監視」「KPI管理のシステム化」といった、標準化・効率化に向けた取り組みを推進し、全17工場での展開を目指しています。

長い歴史の中で独自のノウハウを育んできた各工場。その体制を刷新していくのは容易ではありません。当社の製造DXはどんな未来を目指し、どのような壁を乗り越えて現在に至っているのでしょうか。取り組みを主導する製造DX推進課のメンバーに聞きました。

■ 工場単位のベストプラクティスには限界があった

当社の製造DXの端緒となったのは、最新鋭の設備を整えて2020年6月に稼働を開始した広島工場でした。

「それまでの工場では手書きで行っていた帳票管理を見直し、製造ラインのシステム化・見える化を実現した」と熊谷直仁(SCM本部 製造統括部 製造企画部 製造DX推進課 課長)は振り返ります。

「広島工場では、グローバル規模で見ても最新の体制を整えることができました。このノウハウを全国展開していきたいと考えたのです。人口減少社会にあって、今後は現場の従業員の確保がより一層難しくなっていくことは間違いありません。これまでのオペレーションを変えていかなければ業界内で生き残れないかもしれない。そんな危機感を持っていました」(熊谷)

もちろん既存の工場においても、長年の経験に基づいてベストプラクティスを追求してきました。しかし熊谷は、「それぞれが優秀」なだけでは今後の課題を乗り越えられないと指摘します。

「工場それぞれの改善活動だけでは限度があることも事実です。しかし従来は工場ごとに基幹システムが異なり、他工場との客観的な比較がしづらい状況でした。改善活動が工場内にとどまっている限り自分たちの目線を超えるアイデアは生まれませんが、データに基づいて比較すれば、それぞれの製造工程にさらなる改善点を見出せるかもしれません。そうした横串での連携・変化こそが、これからの成長に向けて欠かせないポイントだと考えたのです」(熊谷)

■ 1万点におよぶデータを精査し、工場と粘り強くコミュニケーション

製造DX推進課のメンバー・前田勉は、それぞれに独自性を持つ工場との連携に苦心してきたひとりです。

「工場や製造ラインによって、システム化ができているところもあれば、そうでないところもあります。そもそもシステムがまったく入っていない工場やラインもある中で、どのようにDXを進めていくのか。これはなかなか大変なテーマだと感じていましたね」(前田)

同じく製造DX推進課メンバーである藤田真吾は、「DX推進に根拠を持たせる」ことに注力してきました。

「最新鋭の設備を誇る広島工場と他の工場では当然ギャップがあります。単純に青天井で設備投資をしていけば追いつくのかもしれませんが、それは生産的とは言えません。まずは工場ごとにデータを取り、オペレーションのどの部分に投資していくべきかを考え、工場側の合意を得て進めていく必要がありました。精査した項目は、工場ごとに数千〜1万点におよびます」(藤田)

「工場側の同意を得る」ことは、プロジェクト全体においてもかなり重要なポイントだったといいます。一般的にDX推進では、既存のやり方を変えることに対して反発の動きが出ることも珍しくありません。当社ではどのようにして現場と目線を合わせていったのか。同じく製造DX推進課のメンバーである吉田武浩は、「当初は『何でやらなきゃいけないの』という声もあった」と打ち明けます。

「工場のメンバーからすれば、本来の生産業務が忙しい中で、新しい業務が差し込まれたような感覚になるのも無理はないと思います。だからこそ私たちは、粘り強く丁寧に説明してDXのメリットを伝えてきました。各工場とは週1回以上の頻度でオンラインミーティングを行い、工場側の希望をできる限り受け止めて理解者を増やしていきました」(吉田)

スピード感を重視するのであれば、「本社方針」の名のもとに強力なトップダウンで進める手もあるでしょう。しかし製造DX推進課はその手法を取りませんでした。

「大切なのは、新しい仕組みによって自分たちのオペレーションがどう変化するかを工場側に実感してもらうことです。メリットを実感してもらえれば現場のみなさんが主体的に、前のめりになってもらえるはず。逆にそのプロセスなく進めてしまっては、DXが一過性の取り組みで終わってしまうかもしれません」(熊谷)

■ 最新システムを使いこなしてもらうための鍵は「若手」にある

当社の製造DX推進は、大きく分けて3つの柱で進められています。

まずはペーパーレス化のソリューション。従来、工場では紙の業務日報を運用していましたが、タブレット端末で入力できるようにしました。これによって管理者の物理的な押印が不要となり、書類作成後のファイリングの手間も削減。過去のデータの検索・閲覧も効率化され、個々人の作業負荷が大きく軽減されています。

次に製造工程を遠隔監視できる機能を導入。工場内にある生産設備や保安設備の状況を、スマートフォンからリアルタイムで監視できるようにしたのです。これまでは1時間に1回、すべての設備を巡回しなければならない現場もありましたが、導入後は1日あたりの人力による監視時間を150分削減することができました。また、トラブル発生時には以前よりも迅速に対応し、早期に復旧できるようになっています。

そして、KPI管理のシステム化も進んでいます。従来は日次・週次でExcelに手入力する手間が発生し、データ共有は各工場内に限られていましたが、共通システムを導入したことでKPIの項目を工場間で容易に比較できるようになりました。データを迅速に集め、問題点を把握できるようになったことで、製造DXの効果がさらに加速していくと期待されています。

こうした新たな仕組みを現場で使いこなしてもらうためには、何が必要なのでしょうか。吉田は「若手の活躍が鍵になっている」と話します。

「システムそのものは、よく使う帳票へQRコードでアクセスできるようにするなど、なるべく簡単に使えるように工夫しています。それでもベテランメンバーは慣れない間は苦労するかもしれません。そこで各工場の若手に大きな裁量を持たせ、システム活用の『先生役』となって動いてもらっているのです。

通常の工場業務では、若手はベテランから仕事を教わる立場です。しかしDX推進ではこれが逆になる。若手がベテランに教えたり、サポートしたりする風景があちらこちらで見られるようになりました」(吉田)

■ チーム運営でも「メンバーの裁量」を重視する理由

当社の製造DXはまだまだ始まったばかり。これから新たにシステムを導入する工場との折衝も待っています。決して平坦とは言えない道のりが予想される中、熊谷は製造DX推進課のメンバーに「自分たちは“夢のある仕事”に取り組んでいるのだと感じてほしい」と声をかけます。

「私たちの部署は、純粋に将来を見据えて活動ができるチームだと思っています。製造DXは当社の将来の姿を左右する重要なプロジェクトです。メンバーにはぜひ、足元の数字や結果に一喜一憂することなく、長期的な視点を持って取り組んでほしいですね。そして、自分自身で課題を見出し、自由な発想で乗り越えていってほしいと考えています」(熊谷)

その言葉通り、熊谷はチームメンバーに任せるべき部分を任せ、それぞれが大きな裁量を持って仕事と向き合える環境をつくっているといいます。このスタンスは、製造DX推進全体の方針とも重なります。

熊谷の期待を、メンバーは真正面から受け止めていました。

「熊谷さんは『自分が責任を取るから自由に動いてくれ』と言ってくれています。この言葉のおかげで余計な迷いなく、現場とのコミュニケーションに集中できています」(吉田)

「大きな裁量を与えてもらっているからこそ、チームのミッションを遂行し、目標を達成したいという気持ちになりますね」(藤田)

「私はこのチームに本格的に加わってからまだ日が浅いのですが、いろいろな面で任せてもらっています。もっと厳しくしていただいてもいいくらい、メンバーを支えてくださっていますね」(前田)

これからの展望を問うと、熊谷は「あくまでも現場が一番大切」だと強調しました。

「製品をつくっているのも、運んでいるのも、営業しているのも現場の人たち。だからこそ私たちはコミュニケーションを大切にし、現場と現場をつなぐ存在として価値を発揮していきたいですね。この製造DXの知見を、ゆくゆくは全社規模で活用できるように昇華させていきたいと考えています」(熊谷)

関連記事